(連載コラム10)犬の療法食とは?種類や違い・与え方と食べないときの対処法を解説

ぺット製品臨床試験, ペット連載コラム 09

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犬の療法食とは、特定の病気や健康状態に合わせて栄養成分の量や比率を調整し、獣医師の診断・指導のもとで与えるフードです。動物病院ですすめられたものの、いつものフードと何が違うのか分からず戸惑う飼い主も少なくありません。健康な犬向けのフードとは設計が異なり、病態や犬の状態に応じて獣医師の指導のもとで選択・継続します。 当記事では、犬の療法食の定義、他のドッグフードとの違い、病気別の主な種類、与えるときの注意点、食べないときの対処法を解説します。

1. 犬の療法食とは?

犬の療法食は、健康な犬の主食に使う総合栄養食とは目的が異なるフードです。同じドッグフードでも、対象となる犬も使い方も別のものとして扱われます。ここでは、犬の療法食とは何かを、栄養設計、与え方、治療との関係の3点に分けて解説します。

1-1. 特定の病気や健康状態に合わせて栄養を調整したフード

療法食は、特定の病気や健康状態にある犬の栄養学的サポートを目的に、栄養成分の量や比率を調整したフードです。腎臓の病気ならリンとたんぱく質を抑え、肥満なら摂取エネルギーを抑えるなど、病態ごとに増減させる栄養素が決まっています。栄養特性が一般的な健康維持食と違うため、健康な犬が食べ続けるフードではありません。

出典:ペットフード公正取引協議会「05.療法食について」

出典:一般財団法人獣医療法食評価センター「療法食とは」

1-2. 獣医師の診断と指導に基づいて与えるフード

療法食を使うかどうかを判断するのは、飼い主ではなく診察をした獣医師です。療法食は、食事療法で獣医師の診断・指導に基づく給与を意図してつくられています。公正競争規約でも、療法食には獣医師の指導に基づいて給与するべき旨の注意書きが求められます。長期間の不適切な使用は健康を脅かすリスクがあり、飼い主の判断だけで選ぶフードではありません。

出典:一般財団法人獣医療法食評価センター「療法食とは」

出典:ペットフード公正取引協議会「05.療法食について」

1-3. 治療を補助する位置づけのフード

療法食は医薬品ではなく、治療を補助する食事という位置づけです。療法食であっても、フードで病気を予防・治療できると受け取れる表示は、公正競争規約で認められていません。医薬品的な効能効果の標榜は、医薬品医療機器等法でも禁止されています。薬そのものではなく、獣医師が立てた治療・健康管理計画の一部として、必要に応じて投薬や検査などと組み合わせて食事面を支える役割があります。

出典:ペットフード公正取引協議会「03.ペットフードの目的について」

2. 犬の療法食と他のドッグフードとの違い

療法食と他のドッグフードは、使用目的、栄養設計、表示ルールの3点で異なります。ペットフードの表示に関する公正競争規約では、ペットフードを使用目的ごとに次の4つに区分し、区分ごとに表示すべき項目を定めています。
目的の区分 対象と位置づけ
総合栄養食 健康な犬の主食。水と一緒に与えれば必要な栄養素を満たせる
間食 おやつやごほうび。給与限度量の表示が必要(総合栄養食の基準を満たす間食は給与量の目安でも可)
療法食 特定の疾病や健康状態にある犬向け。獣医師の指導に基づいて給与する
その他の目的食 一般食や副食など。別途の栄養補給を併記する

出典:ペットフード公正取引協議会「03.ペットフードの目的について」

出典:ペットフード公正取引協議会「04.総合栄養食とライフステージについて」

4区分のうち病名を記載できるのは療法食だけで、獣医師の指導に基づいて給与するべき旨の注意書きも求められます。パッケージに「○○に配慮」「○○をサポート」と書かれた機能性フードは、健康な犬の栄養面を支える製品であり、療法食の代わりにはなりません。選ぶときの確認材料として、療法食基準への適合が確認され、一般財団法人獣医療法食評価センターに登録された製品に表示される登録療法食マークがあります。

出典:一般財団法人獣医療法食評価センター「登録療法食マークとは?」

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3. 病気別に見る犬の療法食の主な種類

療法食は、対象とする病気ごとに調整する栄養素が異なるフードです。一般財団法人獣医療法食評価センターは、慢性腎機能低下や下部尿路疾患、食物アレルギー、肥満など、栄養特性の基準が定められた区分を公表しています。ここでは、犬の療法食の主な種類を4つに分けて解説します。

3-1. 腎臓の状態に配慮した療法食

慢性腎機能低下の療法食は、リンとたんぱく質を制限し、高品質なたんぱく質を使う設計です。窒素含有成分の吸収を低減する設計もあり、どちらかを満たすことが基準とされています。老廃物のもとになる成分を抑え、腎臓の負担を軽くする狙いです。同じ腎臓用でもメーカーごとに栄養組成が異なるため、変更時は獣医師に確認してください。

出典:一般財団法人獣医療法食評価センター「療法食の区分と栄養特性」

3-2. 尿石症など下部尿路に配慮した療法食

下部尿路の療法食は、結石の種類によって求められる栄養調整が変わります。ストルバイト結石では尿の酸性化とマグネシウムの制限、シュウ酸塩結石では尿のアルカリ化とカルシウムの制限が求められ、調整の方向は逆です。同じストルバイト結石でも、溶解時と再発防止時で制限の度合いが分かれます。結石の種類と時期を診断で確かめた上で、獣医師の指示に沿って選んでください。

3-3. 食物アレルギーに配慮した療法食

食物アレルギーの療法食は、原因として認識されにくい原材料を使う設計です。体がアレルゲンと認識できないほど分解した加水分解たんぱく質や、食べたことのない新奇たんぱく質などが使われます。原因となる原材料を使わず、製造管理で混入を防ぐ方法も基準に含まれます。方法は製品ごとに異なるため、原材料表示だけで選ばず獣医師に相談してください。

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3-4. 体重管理に配慮した療法食

肥満に対応する療法食は、低いエネルギー密度を基本とした設計です。同じ量でも摂取エネルギーが抑えられ、食事量を極端に減らさずに済みます。製品によっては、食物繊維で満腹感を保ちやすくしたものや、たんぱく質を高めに調整したものもあります。健康な犬向けの体重管理用フードは、獣医師の指導を前提としない総合栄養食などとして販売され、療法食とは区分が別です。

4. 犬に療法食を与えるときの注意点

療法食は実店舗でも通信販売でも比較的簡単に購入できます。入手しやすさとは別に、栄養素を大きく増減させたフードである点は変わりません。ここでは、犬に療法食を与えるときの注意点を3つに分けて解説します。

4-1. 自己判断で与え始めない

療法食は、獣医師の診断を受けてから与え始めるフードです。症状が似ていても適した療法食は変わり、違う病気の犬では体調が崩れる可能性があります。健康な犬が食べ続けた場合も、特定の栄養素の欠乏や摂取過多につながりかねません。公益社団法人日本獣医師会の検討委員会の調査では、診断指導を伴わない使用や長期間の不適切な使用による健康被害事例として、腎不全、尿石、栄養失調が確認されています。

出典:一般財団法人獣医療法食評価センター「療法食とは」

4-2. 時間をかけて切り替える

フードの切り替えは、1週間から10日ほどを目安に進めます。急に変えると嘔吐や下痢、食欲不振の原因になります。それまでのフードに療法食を少量混ぜ、問題なく食べられたら割合を増やす方法が一般的です。切り替えに抵抗を示す犬では3~4週間以上かかる場合もあるため、進め方は獣医師と相談して決めてください。

4-3. 定期的に獣医師の診察を受ける

療法食を続ける期間は、飼い主だけで決めず獣医師の判断を仰ぎます。体調の変化に応じて別の療法食に切り替えたり、いったん終了したりする場合があります。療法食の中には通常の食事として与えられるものもあり、判断には診察が必要です。定期的な通院は、いま与えている療法食が状態に合っているかを確かめる機会になります。

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5. 犬が療法食を食べないときの対処法

療法食は、食べてもらえなければ食事療法が進みません。切り替えた直後は口をつけない犬もおり、飼い主が食べやすさを工夫する場面も出てきます。ここでは、犬が療法食を食べないときの対処法を3つに分けて解説します。

5-1. 温めたりふやかしたりして香りを立てる

温めたりふやかしたりすると香りが立ち、食べ始める場合があります。ドライフードも電子レンジで温められ、40℃程度、犬の体温くらいが目安です。ふやかす場合はまずぬるま湯を使い、ミルクやスープなど栄養成分を加えるものは、療法食の栄養設計に影響する場合があるため獣医師に確認してから使用しましょう。温めた後は、与える前に指で触れて熱くなりすぎていないかを確かめてください。

5-2. 与える回数や量を分けて様子を見る

一度に食べきれないときは、獣医師に相談した上で、1日の総給与量を確認しながら1回量を減らして回数を分ける方法があります。食欲が落ちている犬では、回数を分けて少量ずつ与えるのでも問題ありません。新旧のフードを隣り合わせの器に入れる二皿給餌法や、器を変える方法もあります。食べない状態が続く場合や、嘔吐や下痢など体調の変化がある場合は、工夫を重ねずに獣医師へ相談してください。

5-3. トッピングを足す前に獣医師へ相談する

トッピングを足すと、療法食で整えた栄養バランスが崩れる場合があります。制限している成分をトッピング側から摂ってしまい、食事療法の狙いから外れかねません。香りだけを足したいときは、かつおぶしなどをお茶パックに入れてフードの袋に入れると、成分を変えずに匂いを移せます。おやつやサプリメントを併用したい場合も、成分の重複や薬との飲み合わせがあるため、獣医師に相談してから与えてください。

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まとめ

犬の療法食は、特定の病気や健康状態に合わせて栄養を調整し、獣医師の診断・指導のもとで与えるフードです。健康な犬の主食である総合栄養食とは目的も表示ルールも異なり、自己判断で始めるものではありません。動物病院ですすめられたら、対象の病態と与える期間を確認した上で取り入れてください。

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